「取引先から電子契約で送ってほしいと言われた」「印紙代と郵送の手間を減らしたい」「今使っているサービスの料金を見直したい」。電子契約サービスを探すきっかけは会社によって異なります。
どの場合も、料金表だけを見て選ぶと、導入後に「承認の仕組みが上位プランにしかなかった」「繁忙月だけ請求が増えた」といったことが起きます。自社の契約業務を先に整理し、その条件に合うサービスを探す順番が大切です。
この記事では、中小企業が電子契約サービスを選ぶときに確認したい条件と比較軸を説明します。具体的な料金の試算は料金比較の関連記事で扱います。
この記事の要点
- 最初に、対象の書類、通常月と繁忙月の送信件数、作成・送信・承認を担当する人数を整理します。
- 比較では、料金、社内承認、取引先の操作、署名の方式と記録、保管と取り出し、サポートの6つを確認します。
- 「電子サイン」「電子署名」「長期署名」などの名称はサービスによって意味が異なるため、名称ではなく方式と機能で比べます。
- 少量利用、複数担当者と承認がある会社、大量送信やシステム連携が必要な会社では、重視する条件が変わります。
- 「利用者数無制限」や「定額」は、自社の件数と使い方に当てはめて初めて有利かどうかが分かります。
選ぶ前に自社の条件を整理する
対象の書類
業務委託契約、秘密保持契約、発注書と注文請け書、雇用契約書など、電子化したい書類を書き出します。書類によって、相手が企業か個人か、社内承認が必要か、どれくらいの期間保管するかが変わります。取引先が紙での契約を求める書類がある場合は、紙と電子を併用する前提で考えます。
通常月と繁忙月の送信件数
年間の合計件数だけでなく、月ごとのばらつきを確認します。月ごとの件数枠があるサービスでは、年度末や新年度の契約更新、人の入れ替わりが多い月だけ枠を超えることがあるためです。過去1年分の契約書の控えや郵送の記録から、月ごとの件数を数えておくと、料金の比較が正確になります。
作成・送信・承認を担当する人数
契約書を作る人、送信する人、送信前に承認する人を分けて数えます。営業担当者がそれぞれ送信し、上長が承認する運用なら、利用者数で料金が増えるサービスは費用が上がりやすくなります。総務担当者1人がまとめて送信する運用なら、利用者数の制限はあまり問題になりません。
比較する6つの視点
1 料金の仕組み
電子契約サービスの料金は、主に次の組み合わせでできています。
- 基本料金(月額または年額)
- 送信料(送信1件ごとの従量料金、または月ごとの件数枠)
- 利用者数に応じた料金
- 承認や書類管理などの追加機能、上位プラン
たとえばクラウドサインの有料プランは、月額の固定費に加えて送信1件ごとに220円(税抜)がかかります(クラウドサイン)。freeeサインはStarterプランに月の無料枠があり、枠を超えた分に従量料金がかかります(freeeサイン)。マネーフォワード クラウド契約は、送信料と保管料が0円で、利用者数に応じて料金が変わります(マネーフォワード クラウドの料金)。
どの仕組みが有利かは、件数、利用者数、繁忙月の偏りで変わります。具体的な試算は料金比較の関連記事で説明します。
2 社内承認
契約書を送る前に上長や総務の承認を得る運用なら、承認の機能がどのプランにあるかを確認します。サービスによっては、承認の機能が上位プランにしか含まれていません。
承認をメールや口頭で済ませる運用もありますが、誰がいつ承認したかの記録が残りにくくなります。送信する担当者が複数いる会社ほど、承認の仕組みがサービスの中にあると管理しやすくなります。
3 取引先の登録と操作
電子契約は、相手が署名して初めて完了します。取引先にアカウント登録が必要か、メールのリンクから署名できるか、スマートフォンで操作できるかを確認します。使えるサインは、署名依頼メールのリンクから署名でき、相手のアカウント登録やアプリのインストールは不要です(使えるサイン)。
取引先によっては、社内規定で電子契約を使えない、紙の原本を求める、という場合もあります。導入しただけですべての契約が電子化できるとは限らないため、主な取引先に事前に相談し、紙で結ぶ契約の管理方法も決めておきます。取引先への依頼の仕方と紙との併用は、別の記事で詳しく説明する予定です。
4 署名の方式と記録
電子署名法では、本人による一定の要件を満たす電子署名が行われた電子文書は、本人の意思に基づいて作成されたものと推定されます。デジタル庁は、利用者の指示を受けてサービス事業者が署名する方式の電子契約サービスについても、Q&Aを公開しています(デジタル庁「電子署名」)。
注意したいのは、名称が同じでも中身が同じとは限らない点です。たとえばfreeeサインは「電子サイン」と「電子署名」で従量料金を分けています。クラウドサインは「電子署名+タイムスタンプ」に加えて「高度な認証による署名」やマイナンバーカード署名を用意しています。使えるサインは、電子契約書の件数とは別に、「長期署名(PAdES+認定タイムスタンプ)」の件数を示しています。
比較するときは、次の点を各社に確認すると、名称の違いに惑わされにくくなります。
- 誰の名義で署名されるか(当事者自身か、サービス事業者か)
- 署名者をどのように確認するか(メール認証、アクセスコード、SMS、本人確認書類など)
- タイムスタンプや操作ログがどの範囲で残るか
- 署名の有効性を長期間検証できる形式かどうか、その件数や追加料金
法的な効力は、署名の方式だけでなく、契約の種類や運用によっても変わります。重要な契約や、法令で書面が求められる書類を電子化する場合は、弁護士などの専門家にも確認してください。
5 保管、検索、取り出し
締結した契約書は、後から探せる状態で保管する必要があります。電子契約でやり取りした書類には、電子帳簿保存法の保存のルールも関わります。対応できるかは、サービスの機能だけでなく、取引先名や日付、金額で検索できるようにするなど、社内の運用でも決まります。具体的な要件は国税庁の情報(電子帳簿保存法特設サイト)と、顧問税理士に確認してください。
保管については、次の点も比べます。
- 保管件数に上限や追加料金があるか
- 紙の契約書を取り込んで一緒に管理できるか
- 解約したときに、契約書と署名の記録をまとめて取り出せるか
解約後の取り出しは見落とされやすい点です。サービスを乗り換えるときに、過去の契約書をどう引き継ぐかに関わるため、導入前に利用規約や問い合わせで確認しておきます。
6 サポート
初めて電子契約を導入する会社では、社内の設定や取引先からの問い合わせに対応する場面が出てきます。電話、メール、チャットのどれで相談できるか、どのプランから電話サポートがあるかを確認します。無料プランはサポートの範囲が狭いことが多いため、試すときにも注意が必要です。
会社のタイプ別に見る選び方
月に数件の会社は、無料プランで足りる場合があります。ただし無料プランは利用者数や保管件数に制限があることが多く、担当者が増えた時点で有料プランへの切り替えが必要になります。
複数の担当者が送信し、承認も必要な会社は、「承認の機能を使えるプラン」の料金で比べるのがポイントです。入門プランの料金が安くても、承認が上位プランにしかなければ、実際に比べるべきは上位プランの料金です。
月に数百件を送る会社や、営業管理システムなどから自動で送信したい会社は、送信単価と連携機能で選ぶことになります。個別見積もりになることが多いため、複数社に同じ条件で見積もりを依頼すると比べやすくなります。
使えるサインが候補になる条件
使えるサインは、年間契約で月額9,200円(税抜、月額換算)のスタンダードプランに、電子契約書月20通、長期署名月10件、利用者数無制限、社内承認ワークフロー、テンプレート管理、監査ログが含まれています(使えるサイン)。月50件までのアドバンスプラン(月額22,000円)もあります。
月20通の電子契約書と月10件の長期署名は別の枠です。どの文書がどの枠を消費するか、長期署名の追加が必要かによって総費用が変わるため、月額9,200円だけで予算を確定せず、必要な署名方式と件数を伝えて見積もりを取ってください。
この構成から、次のような会社で候補になります。
- 送信件数が月に20件前後で、月ごとの増減が大きくない
- 営業担当者など複数の社員が送信し、送信前に社内承認を通したい
- 取引先にアカウント登録をお願いしたくない
- 日本語の電話・メール・チャットで相談しながら導入したい
一方で、月に数件しか送らない会社は、無料プランや基本料金の低いプランの方が費用を抑えられる場合があります。繁忙月に件数が大きく増える会社や、他のシステムから自動送信したい会社は、上限を超えたときの料金や連携の可否を事前に問い合わせてください。
件数ごとの年間費用の試算は、料金比較の関連記事で他社と並べて説明しています。
導入前に進める4つの準備
- 対象書類と担当者を決める。最初に電子化する書類を絞り、作成者、送信者、承認者、締結後の保管担当者を決めます。紙を残す書類の扱いもそろえます。
- 社内承認と相手の操作を試す。テスト用の書類で、作成、承認、送信、受領、署名まで一通り操作します。取引先に依頼する際の説明と問い合わせ先も用意します。
- 締結後の検索と取り出しを試す。取引先や日付などで必要な書類を探せるか、締結文書と署名の記録を取り出せるかを確かめます。担当者の異動やサービス変更にも備えます。
- 費用と運用を見直してから対象を広げる。実際の送信件数、差し戻し、取引先からの質問、紙が残った理由を記録します。繁忙月の件数と必要な署名方式も含め、プランが合っているかを判断します。
資料で機能を確認する
使えるサインの機能、署名の流れ、プランの違いは資料にまとめています。社内で候補を比べる段階の方は、資料をご覧ください。
まとめ
電子契約サービスは、対象の書類、月ごとの件数、送信と承認の担当者を整理してから比べると、自社に合う候補を絞りやすくなります。料金は入門プランの金額ではなく、必要な機能がそろうプランの金額で比べます。署名の方式は名称ではなく中身で確認し、取引先への説明や紙との併用、解約後の書類の取り出しまで含めて判断してください。
相談・お見積もりのご案内
月ごとの送信件数、担当者の人数、承認の流れが整理できている場合は、合うプランと費用をご案内します。











