Microsoft 365の更新案内を見て、「値上がりするなら契約を見直したい。でも安いプランに変えて業務が止まるのは困る」と考える担当者は多いはずです。
結論から言うと、見直せる範囲は社員ごとの使い方で決まります。全員が毎日TeamsやSharePointで共同作業をしている会社は、Microsoftの中でプランを調整するのが現実的です。一方、メールと予定表が中心で、WordやExcelのデスクトップ版を使う人が一部に限られる会社は、メール・予定表を別のサービスに移し、アプリが必要な人だけMicrosoftの契約を残す方法も選択肢になります。
この記事では、判断に必要な情報の集め方、4つの選択肢の違い、移行費や並行稼働まで含めた費用の比べ方を順に説明します。
この記事の要点
- 日本でも2026年7月1日から一部の法人向けプランで価格改定が行われています。対象プランや請求額、適用時期は、購入先と契約内容によって異なります。
- 見直しの前に、請求書で「プラン名・人数・契約形態・更新日」を、社内で「部署ごとに使っている機能」を確認します。
- 見直す方法は、不要な契約の整理、Microsoft内のプラン変更、一部の契約を残す方法、メール・予定表の移行の4つです。組み合わせて進めることもできます。
- 費用は月額単価だけでなく、アプリの利用権、移行費、並行稼働、運用の手間を含めて、初年度と翌年度以降に分けて比べます。
- Outlookを使い続けられるかは、アプリ、メールサービス、利用権、接続方法を分けて確認する必要があります。詳しくはOutlookの関連記事で説明します。
日本でも2026年7月から価格改定。対象プランと更新時期を確認
日本の企業にも関係する価格改定です。Microsoftは2025年12月5日付の日本語公式ブログで、2026年7月1日からの商用ライセンス価格の変更が全世界を対象とし、地域ごとに市場調整を行うと説明しています(Microsoftの公式発表)。
ただし、全プランが一律に値上げされたわけではありません。国内販売元の大塚商会は、Business Basic、Business Standard、Apps for businessなどを値上げ対象として挙げる一方、Business PremiumとOffice 365 E1は今回の改定対象外と案内しています。まず自社が利用するプランを確認してください(大塚商会の価格改定案内)。
日本円での改定例も公表されています。NTTドコモビジネスの案内では、Business Standardの年契約・月払いの月額提供価格(税込)が2,164円から2,423円に変更されています。これは同社で購入する場合の価格例で、Microsoft直販や他の販売元の価格、後半の年払い・税抜の試算単価とは区別してください(NTTドコモビジネスの価格改定案内)。
適用時期も契約内容によって異なります。たとえば大塚商会は、月契約は2026年7月利用分から、年契約は契約更新月に応じて順次新価格を適用すると案内しています。年契約の月払いを、月単位で更新する契約と混同しないことも大切です。自社の請求書、契約更新日、購入先からの案内を確認してください(契約形態別の適用時期)。
見直しの前に確認する2つのこと
1 今の契約の実態
請求書やMicrosoft 365管理センターで、次の4点を確認します。
月払いでも契約期間が1年のプランがあります。支払いの頻度と、途中で解約・減数できるかは分けて確認してください。返金や変更の条件は、契約期間と購入先によって異なります(Microsoft 365の契約条件)。更新日に合わせて計画すると、費用の重なりを抑えやすくなります。
2 部署ごとの使い方
次に、部署ごとに「実際に毎日使っている機能」を書き出します。契約に含まれている機能ではなく、使っている機能を見るのがポイントです。
この表を作ると、「デスクトップ版のExcelが本当に必要な人は何人か」「Teamsは社外会議だけで、Zoomなど別のツールでも代わりがきくか」が見えてきます。Teamsの会議録画やSharePointのチームサイトに業務の記録が蓄積されている場合は、移行の難易度が上がるため、その点も書き留めておきます。
端末の管理、ログイン制御、メールの保存期間や監査のための記録も確認します。業務アプリを使っていなくても、現在の契約に含まれる管理・セキュリティ機能が必要な会社はあります。プランを変えた後に残る機能と、代わりの運用にかかる費用も比較に含めてください。
メールボックスの上限と、実際に使っている容量も確認してください。Microsoftの現行比較表ではBusiness Basic・Business Standardのプライマリメールボックスは1人100GB、Exchange Online プラン1は50GBです。移行先の容量が小さい場合、過去のメールの扱いと追加容量の費用を決める必要があります。
見直しの4つの選択肢
選択肢1 不要なライセンス・重複契約を整理する
プランやメール環境を変える前に、契約数と実際の利用人数を照合する方法です。未割り当てのライセンス、退職・異動後も見直されていない契約、同じ用途の重複契約がないかを確認します。削減できる契約があれば、必要な機能を保ちながら費用を抑えられます。
ユーザーからライセンスの割り当てを外すことと、購入済みライセンス数を減らすことは別です。減数できる時期や条件は契約・購入先によって異なるため、管理画面や販売元で確認し、次回更新に向けて手配します(Microsoftのライセンス購入・削減の説明)。
TeamsやSharePointを全社で使っており、今の機能が必要な会社でも、契約数の整理は検討できます。確認した結果、余剰も重複もなく、機能の変更や移行による利点が小さければ、今のプランと契約数を継続する判断になります。
選択肢2 Microsoft内でプランを変える
Microsoftの中で、社員ごとに必要なプランに分け直す方法です。主な候補は次のとおりです。
- Business Basic:Web版とモバイル版のWord、Excel、PowerPoint、Outlookに、法人メール、Teams、1TBのクラウドストレージが付きます。デスクトップ版のアプリは含まれません。
- Exchange Online(プラン1):メール、予定表、連絡先のサービスです。メールボックスは50GBで、Officeアプリは含まれません。
- Teamsなしのプラン:Teamsを使っていない、または別の会議ツールを使っている場合の候補です。
ここで注意が必要なのは、デスクトップ版Outlookの利用権です。Business BasicやExchange Online単独には、そのアプリを使う権利が含まれていません。別の有効な利用権がない社員は、Web版やモバイル版を使う前提で比較します。アプリの利用権を別に持つ場合や複数アカウントで使う場合は、契約と認証の条件を照合してください(MicrosoftのOutlook利用権の説明)。
選択肢3 一部の契約を残す
デスクトップ版のWordやExcelが必要な社員だけ、アプリの契約を残す方法です。たとえばMicrosoft 365 Apps for businessは、メールサービスを含まず、デスクトップ版のWord、Excel、PowerPoint、Outlookを使えるプランです(Microsoft 365 一般法人向けプラン)。この方法は、選択肢4のメール・予定表の移行と組み合わせて使うのが一般的です。
社内に永続版のOfficeが残っている場合は、バージョンとサポート期限を確認してください。Office 2021のサポートは2026年10月に終了しています(Microsoftサポート)。サポートが終わったOfficeを業務の前提にすると、セキュリティ更新が受けられなくなります。
選択肢4 メール・予定表を別のサービスに移す
メール、予定表、連絡先を、Microsoft以外のグループウェアに移す方法です。使えるねっとの「使えるOffice」はこの選択肢にあたり、独自ドメインのメール、共有予定表、アドレス帳を国内(長野)のデータセンターで提供しています(使えるOffice)。
移す前に確認したいのは、Teams、SharePoint、リアルタイム共同編集に代わる機能がないことです。使えるOfficeの公式FAQでも、これらを日常的に使っている場合は完全な移行が難しく、メール・予定表中心の会社に向いていると説明しています。
使えるOfficeのプランと主な機能は次のとおりです(年契約、税抜、1人あたり月額)。
契約は10IDから、年契約は全プラン、月契約はスタンダード(700円)とアドバンス(960円)のみです。メール・連絡先・予定表のデータ移行支援は75,000円からのオプションで、Microsoft 365との並行稼働期間は1〜2か月が推奨されています。
予定表を使うならビジネスプラス以上、今のOutlookの画面で予定表まで使い続けたいならアドバンスが必要です。Outlookの条件は細かいため、Outlookの関連記事で詳しく説明します。
費用は初年度と翌年度以降に分けて比べる
月額単価だけを比べると、移行の判断を誤ることがあります。初年度には移行費と並行稼働の費用がかかり、翌年度以降は月額の差がそのまま効いてきます。比べるときは、次の項目を並べてください。
- 毎年かかる費用:メール・予定表サービスの料金、残すアプリの利用権、会議ツールを別に契約する場合はその料金
- 初年度だけかかる費用:データ移行の費用、並行稼働中に重なる契約の料金、社員への説明や設定作業の時間
- 見落としやすい費用:パソコンやスマートフォンの再設定、問い合わせ対応、永続版Officeを買い替える場合の購入費
試算例(架空の会社)
以下は、条件を置いた架空の例です。実在の企業の事例ではありません。
- 社員30名。全員がメールと予定表を毎日使う
- デスクトップ版のWord・Excelを日常的に使うのは経理と企画の8名。残り22名はメール・予定表が中心
- 現在はMicrosoft 365 Business Standardを30名で年契約
- Teamsは社外会議で使うが、取引先の多くはZoomでも対応できる
試算では、別途購入したOutlookの利用権はないものとします。移行するD・Eでは、アプリ契約を残さない22名が使えるOfficeのWeb画面でメールと予定表を使い、Word・Excelを編集する必要はないと仮定します。22名にも文書編集が必要なら、そのための利用権と費用を加えて比較してください。
表のAは、契約を変えずに更新する場合の比較基準です。この例は30名全員がメールと予定表を使うため、未使用ライセンスの削減は見込まず、プランの組み替えや移行との差を比べます。
単価は2026年10月20日に確認した公式公開価格です。Microsoft 365 Business Standardは1人月額換算2,098円、Business Basicは1,049円、Exchange Online プラン1は599円、Apps for businessは1,499円です。いずれも年払い・年間サブスクリプション・税抜で、追加のMicrosoft 365 Copilot Businessを含むプランとは分けています。使えるOfficeは公式サイトの年契約価格を使っています(Business Standard、Business Basic・Apps for business、Exchange Online)。実際の契約先の価格や割引とは異なる場合があるため、自社の見積もりに置き換えてください。
表の金額だけで決めず、それぞれの条件の違いを確認します。
- BとCでは、別のOutlook利用権を持たない22名がWeb版かモバイル版に切り替わります。Cには22名分のWord・Excelの利用権を含めていないため、文書を編集する業務がある場合は別の契約も見積もります。
- DとEにはTeamsの有料契約を含めていません。必要な会議・チャット機能を別途確保する場合は、その料金も加えて比較します。
- DとEの初年度には、移行支援(75,000円から)と、並行稼働中に重なる契約の料金が加わります。たとえばDで移行支援を利用し、並行稼働を1か月とした場合、初年度の目安は「431,904円+75,000円以上+Business Standard 30名の1か月分」です。
- Eは予定表をWeb画面で使う条件です。有効なOutlook利用権がある8名はメールをIMAP等で使う方法も確認できますが、ZCOによる予定表・連絡先の連携は含まれません。Dでも、Outlookの利用権を残す8名について、対応する版と共有機能を試してください。
この表のD・Eは、22名がデスクトップ版Outlookを使い続ける条件の総額ではありません。22名にもOutlookが必要な場合は、追加の利用権と、それに合う使えるOfficeのプランを見積もって計算し直します。
この例では、22名がWeb画面でのメール・予定表利用に切り替えられるため、D・Eの年額小計はAより低くなります。日常の文書編集やOutlookの利用権、Teamsなどの追加契約が必要なら差額は変わります。機能と操作の変更を受け入れられるかを確認し、初年度の移行費用も加えて判断してください。
使えるOfficeが合う会社、Microsoftを残す方がよい会社
全社で一律に決める必要はありません。メール・予定表は移し、アプリが必要な人だけMicrosoftの契約を残すという分け方もできます。
更新日から逆算した進め方
移行を選ぶ場合は、更新日の2〜3か月前から準備を始めると、並行稼働の期間を確保しやすくなります。
- 請求書と管理センターで、プラン・人数・契約形態・更新日を確認する
- 部署ごとの使い方の表を作り、残す機能と移す機能を分ける
- 候補のプランで費用を試算し、初年度と翌年度以降を比べる
- 少人数で試験的に使い、Outlookやスマートフォンでの動作を確認する
- データ移行と並行稼働を行い、問題がなければ更新日に合わせてMicrosoft側の契約を変更する
手順4で確認したい業務はOutlookの関連記事にまとめています。詳しい移行手順は、別の記事で説明する予定です。
まとめ
Microsoft 365の値上げをきっかけに契約を見直すときは、まず請求書と社員の使い方を確認し、残すものと移せるものを分けます。メールと予定表が中心で、Teamsやデスクトップ版アプリへの依存が小さい会社ほど、移行による費用の差が大きくなります。費用は初年度と翌年度以降に分け、移行費や並行稼働、操作が変わる社員への対応まで含めて判断してください。
資料・相談のご案内
使えるOfficeのプラン、機能、移行の流れは資料にまとめています。社内で比較検討を始める段階の方は、資料をご覧ください。
利用人数、残したい機能、Microsoft 365の更新日が分かっている方は、移行方法と費用を個別にご案内します。
出典
比較単価は2026年10月20日、日本向けの価格改定案内とライセンス数の変更条件は2026年10月21日に確認しています。
- 使えるOffice 製品ページ(料金・機能・FAQ)
- Microsoft 365 一般法人向けプランと価格
- Exchange Online のプランと価格
- 新しい Outlook for Windows のライセンス(Microsoft Learn)
- Office 2021 のサポート終了(Microsoftサポート)
- Microsoft 365 Business Standard(追加のCopilot Businessを含まないプラン)
- Microsoft日本語公式:Microsoft 365の進化と価格改定
- NTTドコモビジネス:2026年7月以降の価格改定(日本円・年契約/月払い・税込の例)
- 大塚商会:対象プランと契約形態別の新価格適用時期
- Microsoft Learn:法人向けライセンスの購入・削減と変更条件










