「クラウドバックアップって何?」「本当に必要?」――そんな疑問を持つ中小企業の担当者は少なくありません。しかし今、この問いへの答えは以前より切実さを増しています。
警察庁の調査(令和6年)によると、2024年のランサムウェア被害は222件にのぼり、そのうち約63%が中小企業。大企業の被害件数が減少する一方、中小企業の被害は前年比37%増と急増しています。さらに深刻なのは、バックアップを取得していた組織の75%がデータを復元できなかったという事実です。
本記事では、クラウドバックアップの基本から種類・選び方・BCP・セキュリティとの関係まで、中小企業が知っておくべきことをすべて解説します。
この記事のポイント
▶︎ 中小企業のランサムウェア被害は前年比37%増 ─ 「バックアップがあれば安全」は過去の話
▶︎ バックアップは保管場所・方式・管理の設計次第で、守れるかどうかが決まる
▶︎ BCP策定済みの企業は未策定と比べ、1週間未満での復旧率が約2倍
目次
なぜ今クラウドバックアップが必要なのか
「うちは大丈夫」という油断が最も危険です。警察庁「令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2025年3月)には、企業規模を問わずデータを失うリスクが急拡大していることが示されています。
📊 2024年 ランサムウェア被害の実態(警察庁調査)
▶︎ 年間被害件数:222件(前年より増加・高水準が続く)
▶︎ 中小企業の被害割合:全体の約63%・前年比37%増
▶︎ 復旧に1ヶ月以上かかった組織:49%(前年44%から増加)
▶︎ 復旧費用が1,000万円以上かかった組織:50%(前年37%から増加)
▶︎ バックアップ取得済みでも復元できなかった組織:75%
出典:警察庁「令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2025年3月)
注目すべきは最後の数字です。バックアップを取得していた組織の75%が復元できなかった主な理由は「バックアップも一緒に暗号化された」(67%)でした。つまり、バックアップがあれば安全という時代は終わっています。クラウドバックアップの「場所・方式・管理」すべてを正しく設計することが求められています。
ランサムウェアに限らず、HDD故障・誤操作・自然災害によるデータ消失リスクも常に存在します。「いつデータを失うか」ではなく「どう備えるか」を考える時代です。
📋 クラウドに入れているから安全?「責任共有モデル」に注意
Microsoft 365・Google Workspaceなどのクラウドサービスは、ヒューマンエラーによる削除やランサムウェア攻撃からの保護はユーザの責任と明示しています。総務省ガイドライン(令和4年)でも「クラウドサービスを利用した場合の最終責任はクラウドサービス利用者」と明記されています。
IPA(情報処理推進機構)の2025年調査では約7割の企業が組織的なセキュリティ体制を整備していないと回答しています。「クラウドに預けているから大丈夫」という思い込みが、最もデータ消失リスクを高めます。
バックアップとは?
バックアップとは、万一の場合に備えてコンピュータ上のデータを複製しておくことです。特に重要なファイルや業務データは、USBメモリやクラウドなど複数の場所に保存しておくことが基本です。
バックアップが必要な理由は3つあります。
1. 企業の信頼性を担保するため
顧客情報や取引データを消失すれば企業への信頼は一瞬で失われます。一旦失われた信頼の回復には長い時間がかかります。
2. データの価値が高まっているため
DX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中、人事・財務・マーケティングなどあらゆる業務の基盤となるデータの価値は急増しています。
3. 災害・サイバー攻撃からデータを守るため
日本は災害大国です。地震・水害に加え、ランサムウェアなどのサイバー攻撃も急増しています。BCPの観点からもバックアップは事業存続の要です。
データが失われる原因:物理障害と論理障害
バックアップが必要な理由を理解するには、データが失われる原因を知っておくことが重要です。障害には大きく「物理障害」と「論理障害」の2種類があります。
物理障害とは、HDDのパーツが物理的に破損した状態です。磁気ヘッド障害・ファームウェア障害などが代表例で、「カチカチ」という異音や頻繁なフリーズが症状として現れます。物理障害が発生したHDDは通電し続けるとプラッタ(記録面)が傷つき、データ復旧が不可能になります。電源のON-OFFを繰り返したり分解したりすることも障害を悪化させるため避けてください。
論理障害とは、HDDに物理的な破損はないが、内部データやフォルダ構成に不具合が生じた状態です。誤操作によるファイル削除・強制終了によるファイルシステム障害・ウイルス感染などが原因です。どちらの障害もHDDの寿命(一般的に3〜5年)や人的ミスによって突然発生するため、日頃からのバックアップが唯一の根本的な対策です。
バックアップとアーカイブの違い
よく混同される「バックアップ」と「アーカイブ」ですが、目的と保存方法がまったく異なります。
バックアップツールでアーカイブを代替しようとすると容量が膨大になりコストがかさみ、逆にアーカイブツールでバックアップを行うと復旧に時間がかかります。それぞれ専用のツールを目的に応じて使い分けることが重要です。
クラウドバックアップとは?メリット・デメリット
クラウドバックアップとは、インターネット上のサーバにデータをバックアップする仕組みです。USBメモリやNASなどのローカル機器を自社で用意・管理する必要がなく、サービスに登録して初期設定をするだけで自動的にバックアップが行われます。
メリット
① 自動バックアップで運用負担ゼロ
設定後は自動で定期バックアップが実行されます。手動での忘れがなく、IT担当者が不在の中小企業でも確実に運用できます。
② オフサイト保管でランサムウェア対策に有効
クラウドに保管されたデータは社内ネットワークから切り離されているため、ランサムウェアに感染してもバックアップデータまで暗号化されるリスクを大幅に低減できます。
③ 初期費用不要・スモールスタート可能
サーバ構築などの高額な初期投資が不要。月額課金で必要な容量から始められます。
④ 高速復旧でBCPに貢献
イメージバックアップに対応したサービスであれば、OS・アプリも含めてシステム全体を高速復旧できます。
⑤ ログ管理でセキュリティ強化
誰がいつどのデータにアクセス・変更したかの記録が残るため、内部不正の抑止や監査証跡として活用できます。
デメリット・注意点
① 安定したインターネット回線が必要
オフライン環境ではバックアップが実行されません。回線速度が遅いとバックアップ時間が長くなります。
② バックアップが遅くなるケースも
社内ネットワークの帯域状況によっては、ローカルバックアップより時間がかかる場合があります。
バックアップが遅い場合の対処法はこちら>>
③ 提供事業者のセキュリティ水準を確認する必要がある
データを預ける事業者の暗号化方式・認証取得・国内DC保有の有無を確認することが重要です。
④ バックアップデータの保管場所・管理方法に注意
バックアップと本番データを同一ネットワーク上に置くと、ランサムウェア感染時に両方が暗号化されるリスクがあります。オフライン保管・別ネットワーク保管の設計が重要です。
クラウドバックアップの種類
クラウドバックアップには大きく「イメージバックアップ」と「ファイルバックアップ」の2種類があります。
イメージバックアップ(システム全体)
OS・アプリ・設定・データをまるごとバックアップします。障害発生時に環境ごと復元できるため、復旧時間が大幅に短縮されます。BCP対策を重視する企業に最適です。
ファイルバックアップ(ファイル単位)
必要なファイル・フォルダのみを対象にバックアップします。バックアップ容量が少なく済みますが、システム障害時にはOSの再インストールなどが別途必要になります。特定ファイルの保護を目的とする場合に有効です。
3-2-1ルール:バックアップの大原則
バックアップの3-2-1ルールとは:
・データのコピーを 3つ 保持する
・2種類 の異なるメディアに保存する
・うち 1つ はオフサイト(別の場所)に保管する
クラウドバックアップ単独ではなく、ローカルバックアップと組み合わせることで、より堅牢なデータ保護が実現します。3-2-1ルールの詳細はこちら>>
法人向けクラウドバックアップの選び方
クラウドバックアップサービスは数多くありますが、法人が選ぶ際に確認すべきポイントは以下の5点です。
1バックアップ対象の範囲
PC・サーバだけでなく、Microsoft 365やGoogle Workspaceなどのクラウドサービスのデータも含まれるか確認しましょう。Microsoft 365のバックアップは別途必要なケースがほとんどです。
2ランサムウェア対策機能
バックアップデータが本番環境と同一ネットワーク上にあると、ランサムウェア感染時に共に暗号化されるリスクがあります。オフライン・エアギャップ保管や、AIベースの異常検知機能があるかを確認しましょう。バックアップと並行して、端末レベルで脅威を検知・遮断するEDR・XDRの導入も有効なランサムウェア対策です。
3復旧速度と復旧方法
障害発生時に「何時間で業務再開できるか」を確認しましょう。イメージバックアップ対応サービスであれば、OSごと高速復旧が可能です。定期的なバックアップテストが復旧成功率を左右します。
4セキュリティ・データセンターの信頼性
AES-256暗号化の採用有無、ISO27001などの認証取得状況、国内データセンターでの管理かどうかを確認しましょう。法人データを海外のサーバに保管することはデータ主権上のリスクにもなります。
5サポート体制
障害はいつ起きるかわかりません。24時間対応・日本語サポートの有無を確認しましょう。IT担当者が不在の中小企業では、電話サポートの充実度が運用継続の鍵になります。
各サービスの詳細な比較は、法人向けクラウドバックアップ比較をご覧ください。
クラウドバックアップとBCP・セキュリティの関係
クラウドバックアップは単なるデータ保護の手段ではありません。企業の事業継続(BCP)とセキュリティ戦略の中核をなすインフラです。
バックアップとBCP(事業継続計画)
警察庁の調査では、ランサムウェア被害後に1週間未満で復旧した組織の23.1%がBCPを策定していた一方、復旧に1,000万円以上かつ1ヶ月以上かかった組織でBCPを策定していたのはわずか11.8%でした。
BCP(事業継続計画)の策定において、クラウドバックアップは「事業を止めないための最後の砦」として位置づけられます。地震・台風などの自然災害でも、ランサムウェア攻撃でも、データさえ守れれば事業は再開できます。中小企業のBCP対策とクラウドの活用法はこちら>>
バックアップとランサムウェア対策
ランサムウェアの感染経路は、VPN機器の脆弱性(55%)やリモートデスクトップ(31%)からの侵入が大半を占めています。しかし、どれだけ侵入対策を施しても、感染ゼロを保証することはできません。
「感染しないための対策」と「感染してもデータを守るバックアップ」の両輪が、現代のセキュリティ戦略には不可欠です。特にバックアップデータをオフライン・別ネットワークに保管することで、感染時の被害を最小化できます。
バックアップと情報セキュリティ5か条
IPAが定める「情報セキュリティ5か条」にも、バックアップは重要な対策として明記されています。OSのアップデート・ウイルス対策・パスワード管理・共有設定の見直しと並んで、クラウドバックアップは中小企業が最初に取り組むべきセキュリティ対策のひとつです。情報セキュリティ5か条の詳細はこちら>>
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FAQ
クラウドバックアップと同期(クラウドストレージ)の違いは?
クラウドバックアップは、データが消失・破損した際に復旧することを目的として設計されています。一方クラウドストレージの「同期」は、複数端末間でリアルタイムに同じ状態を保つことが目的です。同期はファイルを誤削除するとすべての端末から消えてしまうため、バックアップの代替にはなりません。
バックアップがあればランサムウェアに感染しても大丈夫?
バックアップがあれば身代金を支払わずにデータを復旧できる可能性が高まりますが、「必ず復旧できる」わけではありません。警察庁の調査では、バックアップを取得していた組織の75%が復元できていません。主な原因は「バックアップデータも暗号化された」ことです。バックアップは本番環境と分離されたネットワーク・オフライン環境に保管することが重要です。
クラウドバックアップはどのくらいの頻度で取るべき?
業務データが頻繁に更新される企業では、1日1回以上の自動バックアップが推奨されます。「RPO(目標復旧時点)」=どの時点のデータまで失っても許容できるかを社内で決め、それに合わせたバックアップ頻度を設定しましょう。また取得したバックアップが本当に復元できるかを定期的にテストすることも重要です。バックアップテストの方法はこちら
クラウドバックアップのセキュリティは大丈夫?
信頼できるサービスであればAES-256暗号化、データ転送時の暗号化、多要素認証などにより高いセキュリティが確保されます。選定時はISO27001などのセキュリティ認証取得状況と、データセンターの所在地(国内/海外)も確認しましょう。
お電話でのお問い合わせはこちら:03-4590-8198
(営業時間:10:00-17:00)














